OSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)への試み ~ その3
前回までのまとめ
・ 睡眠時無呼吸症候群(OSAS:閉塞性睡眠無呼吸症候群)は健康に影響を与えるため対策が必要です。
・ 最も効果的な対処法はCPAP(シーパップ) ですが、手軽に使用しにくいため十分に普及しているとは言えません。
・ CPAPの代用として、就寝時に装着するOA(口腔内装置)についての研修を受けて参りました。
さて本文です
OAの作用機序は、下顎の開口制限と前方移動、および下顎の固定 にあります。
睡眠時(特に仰向けで休んでいるとき)は下顎が下方に沈みそれによって気道が閉鎖され、いびきや無呼吸が起こるため、下顎を前方で固定させ、気道を確保します。
下顎の固定位置は、噛み合わせの高さを出来るだけ低くすること、また水平に前方移動させることが重要とのことです。
OAで、十分な効果が得られなかった場合は減量やCPAP、手術などとの併用が勧められます。
研修最後の講義は川名ふさ江先生(日本睡眠総合検診協会 代表理事)で携帯型睡眠呼吸検査装置の判断方法とレポートの正しい読み方についてでした。
さて、研修を終えて、OA(口腔内装置)をご希望された患者さんに、実際に装置を作成し装着していただきました。以下はそのデータです。
* この検査結果の公開につきましては患者様のご許可をいただいております。
これは、OA(口腔内装置)を装着していない時の携帯型睡眠呼吸検査装置のデータです。(図をクリックすると拡大されます)
青矢印のSpO2は 動脈血酸素飽和度で、通常は95%以上です。これが睡眠時の無呼吸により一時的とはいえ70%以下に低下している事をあらわしています。
また赤矢印はいびきをしているポイントを示しています。
これは、OA(口腔内装置)を装着した時の携帯型睡眠呼吸検査装置のデータです。(図をクリックすると拡大されます)
青矢印のSpO2が改善していることが読み取れます。
また赤矢印のいびきも減少しています。
今回の患者様の、装着前と装着後の検査結果は
AHI ODI
OA 未装着時 31.0 回/時 32.2 回/時
OA 装着時 20.8 回/時 19.1 回/時
、
AHI、ODI共に改善が見られます
くりかえしになりますが、
AHI は 無呼吸低呼吸指数 ・・・ 無呼吸低呼吸が1時間あたり10秒以上続く回数
ODI は 酸素飽和度低下指数 ・・・ SpO2が下降する1時間あたりの回数 です。
AHIは睡眠障害の判定基準となります
AHI < 5 正常
5 ≦ AHI < 15 身体に異常がないレベル。
日中に強い眠気がある場合は精密検査の受診が勧められる
15 ≦ AHI < 30 中等度の睡眠障害 (要受診 もしくは要保健指導)
30 ≦ AHI 重度の睡眠障害 (要受診)
今回は、OA(口腔内装置)による、睡眠時無呼吸症候群の症状改善は期待通りの結果となりましたが、当然、このような改善が常に期待できるかどうかは不明です。
しかし、OAがたくさんの睡眠時無呼吸症候群に悩まされている患者さんにとって、症状改善のための選択肢の一つとなり得ることは間違いないことだと感じています。
今回は研修を受けて、最初の一例でしたが、さらに研鑽や経験を積み、より効果的なOA(口腔内装置)の作成技術を磨きたいと考えています。
長々とおつきあいいただきありがとうございました。